阿部はるまさ(流山市議会議員,千葉)

 

いじめにあったり、学校になじめなかったり、不登校になる等々で、悩み、苦しんでいる子どもたちは少なくない。親として、地域社会として、何とか支えてあげたいとの思いが募る。
 この善意を取り込む形で、国は、「こころの健康政策」を打ち出し、特に子どもたちを対象にした「こころの健康相談」に国策として力を入れようとしている。心の病には「早期発見・早期介入」が効果的だとして、教師、養護教諭、スクールカウンセラー等を通じて、精神科へとつなげる政策だ。
 しかし、この政策は、極めて危うい。現在の精神医療の未熟さ、拙劣さ、早期介入の先行モデルケースとされた三重、長崎等々の地域で子どもたちに生じた現実を見れば、恐るべき結果を招くことは必至だ。
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 「うつ病は風邪と同じ」の言葉を信じて精神科を受診。双極性障害の疑いありとして医師が出す薬を服用。薬を飲んでも治らずますます状態が悪化。医師は病気の進行だと言い、薬の種類や量が増やされていく。次第に抑うつが激しくなり、自殺願望や暴力行為などが生じ、自分自身や家族を傷つけ、とうとう措置入院。
 学校での教師や友人との関係の悩みから不登校に。行政のカウンセラーに紹介された病院で統合失調症と診断。処方された薬を服用するが症状は改善されるどころか悪化する一方。不安になった保護者にも、「あなたも病気だ」と薬が出され、親子ともども患者生活を送ることになり、家庭は崩壊。
 子どもが不登校になり、多くの著書を持つ有名な精神科医の門を叩く。処方された薬を服用したが状態がどんどん悪くなる。薬物依存を疑い警察の麻薬覚せい剤相談センターに相談したら、すぐ精神保健福祉センターに行くよう言われ、そこで「その薬は医者が処方できる覚せい剤です」と告げられる。断薬に努めると、あとはとんとん拍子で回復。
 以上はほんの一例だが、このようなケースが、モデル地域のみならず全国で多発している。それどころか「心の病気」と診断された人々がたどる典型例とさえなっているのだ。
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 その理由を、この問題に当初から警鐘を鳴らし続けてきた精神科医の笠陽一郎氏(松山・味酒診療内科)は、自身が試みた1万例を超えるセカンドオピニオンの経験を通して、次のように語る。
 「誤診は、大きく分けて、統合失調症とうつ病の過剰拡大診断がある。どちらの疾患も、そうそうあるわけではなく、NHKの百人に一人キャンペーンなど、根底から間違った情報である」
 「セカンドオピニオン事例で、圧倒的に多いのは前者である。つまり、一過性の混乱や内分泌性、薬剤性(アルコールを含む)など、広い意味での非定型精神病とか、発達障害の二次、三次障害が、全国各地で統合失調症とされている」
 「一旦『統合失調症』の診断が付けば、あるいはそれを疑われただけでも、『劇薬』とされている薬が処方され、様々な副作用が少なからず出現する。…副作用の中には、認知力や知能の低下、抑うつ、高揚や衝動性の昂進、幻覚や妄想、興奮、不安、焦燥、不穏、多動、失禁、高熱、死亡など、深刻な心身の症状が含まれる。…医師の方ではそれらを新たな精神症状の悪化と判断し、さらに別の薬を足してしまうことが多い。そのために新たな薬の副作用も加わって、…いつのまにやら多剤大量投薬というアリ地獄から出られなくなってしまうアリサマが、今日のわが国の精神科医療の実際」
 笠医師ら、現在の精神医療の改革を目指している医師や医療関係者の証言によれば、精神科の診断のほぼ9割は誤診であり、まれに正しい診断が行われた場合も、薬の処方が間違っているため、その副作用によって様々な心身の異常に苦しんでいるのが実態だという。事実、笠医師らのセカンドオピニオンによる新たな診断と助言に従って減薬・断薬に努め、繊細な治療を受けた多くの「患者」は、劇的に症状が改善し、通常の生活を送れるようになっている。
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 このような、精神医療のおよそ医療とは言えない現状をそのままにして、それが学校等を通して組織的に、有無を言わさぬ雰囲気をつくり出しながら子どもたちの中に持ち込まれていけば、取り返しのつかない事態となることは火を見るより明らかだ。本当に病気が疑われる子にはそれをさらに悪化させる治療が施され、そもそも病気でなく治療の必要のない子にも多剤大量処方が奨められ、薬物中毒に見られる様々な心身の異常に苦しめられ、人生をその初期の段階で致命的に狂わされることになってしまう。
 この「こころの健康政策」「早期発見・早期介入」動きの背景には、国と結ぶことで新たな仕事と活躍の舞台を得んとする精神医学界、市場拡大をねらう医薬品業界、「国民の要求」を吸い上げた「実績」を欲しがる政治家、そしてTPPで日本市場を狙う米国の医薬品業界等々の思惑もある。特に、政治家の果たしている犯罪的役割は、看過しがたい。彼らの浅薄な善意、間違った知識、現実から学ぼうとせぬ姿勢、そして物欲しげな政治的野心が、子どもたちを地獄に追い込もうとしているのだ。
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 病気でない者を病者に仕立て上げ、その犠牲者の屍の上で肥え太り、地位や影響力の維持・拡大をはかろうとする勢力の「こころの健康相談」の本当の狙いを明らかにする必要がある。生きづらさが蔓延する社会の中で、心の病で苦しむ人々は確かにいる。彼らは、とげとげしい、敵対的な社会から防衛されながら、真に適切な医療を受ける権利を保障されなければならない。
 しかし最も治療を必要としているのは、死ぬも生きるも自己責任、弱肉強食の原理で人々を引き裂き、孤立させ、心身ともに限界まで疲労困憊させている社会のありよう自身だ。もともとは社会の連帯や支え合いの中で安心し、幸福感を感じる生き物である私たちヒトにとって、社会のきずなの崩壊、社会自身が人々を傷つける凶器と化した現実は、耐えがたい。
 私たちの社会が本来の人間らしいきずなを取り戻す闘いの一貫としても、病に苦しむ人々の権利をしっかりと防衛、擁護するとともに、医原病、薬原病のさらなる蔓延をもたらすこと必至の「早期発見・早期介入」の動きを何としても阻止しなければならない。

 

ワーカーズNo463より

 

岡田さわこ野田市議会議員,千葉)

「こころの健康」とは何なのか?  

 野田市議会に「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)の法制化を求める請願が提出され、賛成多数で可決されてしまいました。(市民ネットは反対討論をしました)この法案を作るために、国会議員も超党派で議員連盟が成立されてはいますが、この法案に潜む問題を捉えているとは言えない状況です。現在の精神科医療の誤診、重篤な副作用を引き起こす薬の投与、安易な受診促進に繋がる恐れなどがあり、すべての問題(自殺、虐待、ひきこもり、DV、不登校、いじめ、職場のうつ、高齢者の孤立など)の根底には「こころの健康」があるとし、社会の問題を矮小化して本質のすり替えをしていること自体危惧を感じています。

 

市民ネットワーク・のだ通信より