赤沼侃史(精神科医,千葉)

精神科早期介入政策について

子どもの心の問題に精神科が早期に介入することへの問題点を指摘したいと思います。子どもは大人と違って成長します。成長には身体的な成長と、心の成長があります。心の成長について現在の精神科医療の問題点です。

子どもの心に大人が持っている心の概念が当てはまるかどうかの問題点を指摘しておきます。大人の心は精神身体二元論で説明されています。それは大人の心について今のところ説明可能なのです。ところが子どもの心は精神身体二元論では説明がつかないところが多いです。精神身体一元論だと説明つく場合が多いです。

特に心の問題を抱えている子どもの心は精神身体一元論の方が説明がつきます。その意味で精神身体二元論に基づく精神医学が子どもの心を扱おうとすると、間違えてしまう場合が多いようです。現実に精神科医療を受けていた子どもについて、その薬を止めて、子どもへの対応を変えることで、子どもの精神症状が解決しています。

子どもの心は脳の成長とともに成長をしていきます。精神科医療でも心の成長を考えています。精神科医療で用いる薬は脳に作用してその効果を発揮しています。しかし脳の成長を配慮した薬は今のところありません。脳の成長には解剖学的な脳の成長と脳が持つ情報つまり心という意味での成長があります。そのどちらも今の精神科領域の薬は配慮していません。

現在の薬は大人の心についての効果ばかりが強調されて、子どもの心についての副作用は全く分かっていません。特に長期に使われた場合には、子どもの心の成長に悪影響を与える可能性が考えられます。子どもの人権に関わる問題を生じてしまう可能性を排除してから、薬を使う必要があります。

 

「思春期精神病理の疫学と精神疾患の早期介入方策に関する研究」の報告書について

どの報告書も決めつけの物ばかりです。具体的なフィールドリサーチのデータはありませんから、どのような統計処理がなされて、書かれている結果が出てきたのか全く分かりません。報告書を信頼できない理由の一つです。これらの報告書からの印象を述べます。

子どもの精神病様症状体験から精神障害への移行した場合の経過、回復した場合への経過、の検討が全くなされていません。適切な対応と言う言葉で濁してあります。適切な対応が何か、適切でない対応が何か、を明確にしないと、早期介入をどのようにするのか分かりません。現実に医療現場では早期介入の具体的な方法がないと言うことになります。具体的な方法がないのに、早期介入を主張する報告書には矛盾があります。

早期介入の中には投薬の例もあるはずです。使われる殆ど全ての向精神薬は効果、安全性について、子どもへの投薬を保証していません。その安全性や効果が認められていない薬を現実に発達段階にある子どもに投与するのが医療として認められている社会制度に、医療に疑問を感じます。現在の保険制度は病名と薬の適応が一致していれば使用可能です。子どもにとって効果があるとは分からない薬、子どもにとって安全であることが分からない安全性を保証されていない薬を使っても、医療として公に許されている現実があります。

精神科医療では子どもの精神病様症状体験を精神障害の前駆症状と判断しています。これは心身二元論の大人の精神疾患を子どもにまで拡大した物です。これは精神科医の先入観と言って良いです。科学的な保証はどこにもありません。科学的に子どもの成長期の脳と大人の脳とその機能において大きく異なっています。脳を考えない心身二元論を子どもに当てはめては間違いになります。

心身一元論で言うなら、精神科医療で言う精神病様症状体験とは、嫌悪刺激から回避できないときに子どもが出す症状です。ですから、嫌悪刺激がなくなるとこの症状がなくなります。それは子どもを素直に観察していれば分かることです。しかし精神医療では先入観から、精神障害の前駆症状と規定して、子どもが出す生理的な反応症状であることを無視し続けてきています。

子どもが出す精神病様症状体験は、心身一元論から言うなら、回避できない嫌悪刺激に反応をして出している症状です。適切な対応とは回避できない嫌悪刺激から子どもを守ることです。嫌悪刺激から子どもが守られたなら、子どもは精神病様症状を出さなくなり、それ以後何もなかったかのように育ってくれます。

しかし現在の精神科医療は精神病様症状体験があると、精神障害の前駆症状、又は精神障害として、投薬を始めてしまいます。嫌悪刺激から子どもを守ることをしません。ですから、子どもは精神病様症状を出し続けます。薬でその症状が軽減する場合もありますが、それと一緒に薬の副作用で苦しむことになります。その結果子どもが嫌悪刺激に反応してこれらの症状を出していることが分からなくなります。全ての精神科医が先入観にとらわれて、見落としている事実です。

嫌悪刺激で精神病様症状を出し続ける子どもに適切な対応として言って、薬を投与し続けても精神病様症状を出し続けます。精神病様症状を出し続けると、心身一元論では精神病様症状を出し続ける神経回路が強化されて、嫌悪刺激にも過敏に反応して、程度の差はあっても絶えず精神病様症状を出し続けることになります。成人型の精神障害に移行していきます。