精神科の早期介入とは-予防的介入-

「病気の重症化を防ぐため」という名目のもと、精神科の早期介入は始まりました。精神疾患は治療するまでの期間が長くなればなるほど、その後の経過が悪くなるというのがその理由です。
さらに、そうした論理を拡大させて、精神疾患が発症する前の段階で介入すれば、発症予防につながるという考えが出てきました。予防的介入というわけです。


しかし、そうした子どもを見つけ出さなければ、介入はできません。まだ精神疾患を発症していないが、発症のリスクのある子どもをどうやって見分けるのか――。


以下のような質問で、まず子どもたちはスクリーニングされるのです。
①超能力などによって、自分の心の中をだれかに読み取られたことがある。
②テレビやラジオから、あなただけにメッセージや暗号が送られてきたことがある。
③誰かに後をつけられたり、こっそり話を聞かれたりされていると感じたことがある。
④他の人には聞こえない「声」を聞いたことがある。

 

 これら4つは「精神病様症状体験」(PLEs)といわれるもので、この中の一つでも当てはまれば、その子どもは「PLEs群」として選別されます。PLEs群は、のちに統合失調症などの精神疾患を発症する確率が高くなるから、精神科医、看護師、心理士などが「早期支援チーム」を組み、いち早くアプローチすべきである、というのが、早期介入のやり方です。

 

発症する確率は非常に低い
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
PLEs群について調べたニュージーランドの研究では、そうした子どもの75%は、15年後いかなる精神疾患も発症していないという結果が出ています。
さらに、PLEsとは多少違う概念ですが、統合失調症を発症する前の「危険な状態」を表す「ARMS(アームス)」(あるいは「前駆期」)という概念があります。PLEs同様いくつかのチェック項目があり、これに当てはまりさらに医師によって診断されるのですが、ARMSと診断された子どものうち、では実際どれくらいの子どもがのちに精神疾患を発症するのかといえば(これは研究が積み重ねられていくにしたがって、その数字もどんどん落ちてきました)、今では10%を切るほど、非常に低い確率なのです。


つまり精神疾患の発症予測はほぼ不可能ということです。予測ができないのに、予防などできるはずがありません。
にもかかわらず、日本ではすでにいくつかの施設において、ネットを通して該当者のリクルートが行われ、早期介入は実施されています。

 

さらに、学校においても、『心の病気ハンドブック』が教師たちに配布され、「危険因子」を持つ子どものスクリーニング手段が伝授されています。それだけでなく、スクールカウンセラーはもちろん、養護教諭、はては子どもたちに対してまで精神疾患教育が行われ、「お友だちに当てはまる人がいたら、親や先生に相談しましょう」と呼び掛けているのです。